彼の手は…
あなたは17歳も年上。
出会った時、うちは14歳だったね。
周りには犯罪だって言われてたね。でも、本気で好きになったよ。
毎日毎日、あなたに会うたび幸せを感じてた。
ずっと一緒にいたいと思ったよ。
まさか、こんなに早く別れがくるなんて…。
彼は末期癌だった。
若いから進行が早く手の施しようがないと言われた。この1年が勝負だって…笑いながら言う あなたに冗談だと思った。でも、本当だったんだね。彼から宣告されたのを聞いたのは2002年7月21日。
うちの17回目のbirthday。聞きたくなかった。考えたくもなかった。
あなたはここにいる。うちの隣にいるじゃん。ずっと一緒なんでしょ?結婚するんでしょ?
宣告されてからは毎日毎日一緒にいた。仲間たちと騒ぎまくった。少しでも、ちょっとでも思い出を作るために。
ずっと笑ってた。辛かったし泣きたかったよ。でも、うちより、あなたはもっと辛いでしょ?苦しいでしょ?だから精一杯の笑顔でいたよ。
そんなこんなで、あっという間に1年が過ぎた。あなたは声を震わせながら言ったよね。
「俺、怖いよ。死ぬの嫌だよ」
最初で最後、あなたがうちに見せた涙。たまらなくって抱き締めた。
もうすぐ別れがくる。
2003年9月20日22時頃、彼はうちらの目の前で倒れた。救急車で病院に運ばれる。
彼の手を握り締め夢であって欲しいと願った。先生から今日が山場でしょうと言われた。
あなたの手を握り締め、側を離れなかった。離したら終わってしまう気がして…。
あなたが笑った顔が好きだと言ったから、ずっと笑ってたんだよ?
どうして逝っちゃうの?
うちを置いて逝かないで。1人にしないでよ。
ふと時計を見ると4時過ぎ。うちに言った事覚えてる?
「俺、さやの事守れそうにない。だけど好きだ。こんな俺でも良かったら…結婚してください」
あなたは指輪を渡してくれた。うち…受け取れなかった。そんな事、元気になってから言ってよ。すごい嬉しいんだよ。なのに…。
「さや…。俺の変わりに生きてくれ。お前は1人じゃない。周りを良く見るんだ。みんな味方だ。お前が笑ってなくてどうする。お前が笑ってれば、みんなも笑う。俺は笑ってるお前が好きだ」
彼は必死に、うちの頬に手をやった。泣くのを必死にこらえた。
「さや、ごめんな…」2003年9月21日7時21分
彼は永遠の眠りについた。うちは泣き叫んだ。声にならない声で泣いた。彼の手を…握り返してくれない彼の手を離さなかった。
この後の事は、殆ど覚えてない。
うちは彼の元へ逝こうとした。でも、生きろって言われたから…。
やり場のない気持ちをリスカという形にしてしまった。泣きたいのをこらえて笑った。苦しかった。でも、生きてて良かった。辛い事もあったけど、あなたと叶えられなかった夢、果たそうと頑張ってるよ。
今は幸せです。
でも、忘れない。
2008年5月16日
もうすぐで5年になる。
